「りんごの村」フェアのお知らせ
『りんごの村』復刊記念、京都誠光社、東京森岡書店、二か所で開催いただいた「河野鷹思のグラフィックデザイン展」に続き、Gallery5610のウィンドウと奥のSPaTio5610にて『りんごの村』フェアを開催します。小出正吾さんの書いた文章は、児童書という枠におさめず世代を超えて読んでいただきたいお話しです。
SPaTio内では河野鷹思の『りんごの村』をはさむ戦前から戦後にかけての書籍雑誌の仕事と、関連作品を展示します。
森岡書店の入っている鈴木ビルは、1929年(昭和4年)竣工の「東京都選定歴史的建造物」であり、日本工房が国際報道工藝株式会社と名を変える頃、このビルを社屋としていました。
ベルリンから帰国した名取洋之助の立ち上げた日本工房が、報道写真を軸に日本の文化を海外へ発信するべく1934年に創刊した対外文化宣伝グラフ雑誌『NIPPON』のデザインとレイアウトは、戦後モダンデザインの源流といわれ、今の時代に見ても劣らないものです。今回は河野鷹思がデザインを担当した1938年『NIPPON15号』の表紙と掲載された東京観光絵地図のページを展示します。
1930年代後半から世の中が戦争へ向かって変化をしていき、1941年に徴用された河野はジャワで敗戦を迎えます。1946年捕虜生活から解放され帰国、最初の仕事が戦前からの旧知・伊藤逸平主宰イヴニングスター社刊<諷刺雑誌「VAN」>の表紙と中身のカットなどのイラストレーションでした。同じくイヴニングスター社の「黒猫」「人間喜劇」等の風刺雑誌のほか書籍も多数手がけ、福田勝治写真集『花と裸婦と』の装幀も行いました。
1950年代にはいると『りんごの村』を含め国語教科書の表紙絵や茶道総合誌「淡交」などを手がけました。1956年、欧米を周るデザイン視察に向かいます。今回、上記のイヴニングスター社の仕事に加え、その視察に携行したシルクスクリーン印刷による20葉1組のポートフォリオのうち、ジークレープリントで復刻した5作品を、展示販売します。