Past Exhibition
デコート豊崎アリサ写真展「トゥアレグ 自由への帰路」
2023年6月6日(火)~6月16日(金) 11:00AM〜6:00PM(最終日3PMまで)
私は27歳でサハラ砂漠と運命的な出会いをした。満点の星空の下で、永遠に広がる砂丘にナツメヤシの影を差した瞬間、砂漠には私がずっと追い求めてきたものがあると確信した。
バブル期の東京に住んでいた私は、その瞬間から迷うことなくサハラにすべてを捧げた。ニジェールで男性しかいない塩キャラバンと同行し、トゥアレグ族の遊牧民と出会った。
トゥアレグ族が話すタマシェク語には「自由」という言葉はない。それは1000年以上前から続く遊牧民の自給自足の暮らし自体が自由であり、改めて「自由」を言葉にする必要がないからなのではないだろうか。私はそんな生き方に惹かれ、ニジェール、マリ、アルジェリアを行き来する彼らと共に旅をし、車やラクダで国境を何度も越え、壮大な砂漠を横断した。キャラバン商人、ラクダ使い、反乱の戦士や密航業者。過酷な砂漠に生きる彼らは、忍耐力と勇気、節制を教えてくれた。
自分のラクダを購入し、ソーラーパネルを担ぎ、塩キャラバンのドキュメンタリー映画の撮影などを経て、2006年にアルジェリアで、ラクダ使いの仕事を支える「ラクダ・オーナー・プラン」を企画すると、大勢の日本人がスポンサーになって、ラクダ乗りキャラバンに参加してくれた。
このように、日本とサハラの文化的な架け橋としての活動が軌道に乗りかけた私は、2010年に塩キャラバンについての本を日本語で執筆しはじめた。
しかし翌年、3・11が起き、本の内容は核やテロ問題の色に染まってしまった。こうしてジャーナリストとしての生活がはじまり、サハラ砂漠のウラン鉱山の実態も知ることになる。放射能によってどんどん壊されていく自然のなかで生きることは、日本とサハラの新たな結び目となり、現場での取材を優先した私は、2022年に「自由への帰路」の出版*にようやくこぎつけた。
両方の世界を取材し続けると、トゥアレグ族の独立運動が日本の反原発運動と重なり、やがてひとつの「自由への戦い」になっていることが見えてきた。
今回日本で初めてとなる個展では、写真と映像と音声、そして民芸などを通じて、 トゥアレグの素晴らしい文化をご紹介します。 ― デコート豊崎アリサ ー
*日本旅行作家協会「第8回斎藤茂太賞」受賞。
<ギャラリートーク>
●6月6日(火)19:30〜20:30 【定員になりました】
ピーター・バラカン(ブロードキャスター)×デコート豊崎アリサ「トゥアレグのレベルミュージック」
●6月9日(金)19:00〜20:00【定員になりました】
石田昌隆(写真家)×デコート豊崎アリサ「マリの砂漠フェスティバル」
●6月10日(土)19:00〜20:00
圓尾公佑(編集者)×デコート豊崎アリサ「SAHARA-ELIKI アルジェリアでのラクダキャラバン」
<new!>●6月15日(木)19:00〜20:00【定員になりました】
石田温香(ジャーナリスト)×デコート豊崎アリサ「サハラのウラン鉱山」
各回定員25名(要予約)e-mail : yoyaku@deska.jp
参加費:¥1,000
会場:Gallery5610
●デコート豊崎アリサ Alissa Descotes -Toyosaki
ジャーナリスト、写真家、ドキュメンタリー作家。
日本人とフランス人の両親を持つ。幼少期から冒険家の父とアフリカを旅し、サハラ砂漠に出会う。その後、自身のラクダ3 頭を保有し、トゥアレグ族の男性のみで構成される塩キャラバンの一員となり、ニジェール、マリ、アルジェリアの砂漠を放浪する。また、トウアレグ族の遊牧生活を支援するため「サハラ·エリキ」を設立し、本物のキャラバンを体験するツアーを主催。ティナリウェンやタミクレストなど、トゥアレグ音楽を日本に紹介する活動も行う。2011年3月11日の東日本大震災を機にジャーナリスト活動をはじめ、パリ、東京、サハラ3か所の拠点を行き来しながら取材を続けている。2015年、「ニジェールとウラン鉱山」を取材し、報道雑誌連合組合の調査報道大賞受賞。パリで「ウラン鉱山とトゥアレグ族」の写真展と講演を開催。2016 年、ソーラーパネル担ぎ、ドキュメンタリー映画「Caravan to the future」を撮影·監督し、3000キロを横断する塩キャラバンの日常を描いた。日本をはじめ、ニジェール、フランスなどで上映トーク会を開催。
2022年「トゥアレグ 自由への帰路」をイースト・プレスより出版。