この度、東京藝術大学 彫金研究室から博士課程、修士課程を卒業する作家によるグループ展を開催致します。
それぞれの作家が未来への希望とメッセージを作品を通して伝えます。便利なことが増え、簡単に情報を得られる現代において、真剣に素材と向き合ってきた私達のメッセージを是非会場でご覧ください。

●石　芮寧(Shi Ruining)
1996年　中国生まれ
2017年　中国地質大学　卒業
2020年　神戸芸術工科大学 大学院　卒業
現在　東京藝術大学 大学院美術研究科 博士後期課程 工芸研究領域（彫金）3年
物事の存在には「有」だけでなく、「無」にも様々な要素が内包し存在します。有があってこそ無があり、無があってこそ有があるという相対的な関係で構成され、この有無の関係する空間を元にした発想を背景に、ジュエリー表現の可能性を見出す研究を展開しました。「有の断片、無の瞬間」をテーマとして、光によって投影された影と空間との関係の中で、視覚において瞬間的な変化から生まれる美への思考に着目し、物質の存在と非存在を基に、有形と無形の造形的な融合により、独自のジュエリー表現を追求しています。

●金　希帥(Heesoo Kim)
1982年　韓国生まれ
2005年　ソウル国立大学美術学部金属工芸専攻（韓国） 卒業
2009年　ソウル国立大学院金属工芸専攻（韓国） 修士課程修了
現在　東京藝術大学 大学院美術研究科 博士後期課程 工芸研究領域（彫金）3年
ソウル国立大学美術学部金属工芸専攻を卒業後、同大学院で修士課程を修了。2011年にはソウルで個展「Needlework」を開催し、2007年と2009年にはチョンジュ国際工芸ビエンナーレに入選し、受賞した。現在、東京芸術大学の博士課程に在学しており、感情や記憶などの内面的な風景を探求し、銀の「金属糸」を「くるむ」技法を通じて、心のバランスを回復する過程を比喩的に表現する作品を制作している。韓国工芸家協会、ソウル金属工芸会、TOOLの会員として活動し、日本や韓国、アメリカなど海外の多くのグループ展にも参加している。

●呂　贇蛟(Ryo Inkyo)
1988年　中国生まれ
2017年　中国伝媒大学　卒業
現在　東京藝術大学 大学院美術研究科 工芸 彫金研究室　修士2年
自然の中の心地よい感覚体現を装身具という形態の作品で記録している。
近年、新型コロナウィルス感染症によって引き離された人的距離感や、世界経済への長期的不況への絶望、 頻繁な自然災害や国家間戦争などのネガティブな事象が頻発している。そのため、私は今後人々に精神的保護や支援が必要になってくると感じている。
そこから、昨年のデンマークでの交換留学の生活の中で、身の回りの自然物が接触したことから発する音や、コントラストのある質感、そして風や波の動きを示す心地よい自然物を多く収集し、記録した。 この経験は、これらの自然現象が私たちの五感にどのように影響を与え、癒しに寄与するかをさらに探求したいという欲求を引き起こした。
受賞歴
・第55回日本七宝作家協会国際展の日本七宝作家協会会長賞　
・第32回日本ジュエリー展(JJDA)の奨励賞
・第57回日本七宝作家協会国際展の佳作

●久保　歩美（Ayumi Kubo）
1985年　青森県八戸市生まれ
2023年　東京藝術大学 美術学部 工芸科 彫金研究室　卒業
現在　東京藝術大学 大学院美術研究科 工芸 彫金研究室　修士2年
青森県八戸市出身。社会人経験を経て、東京藝術大学美術学部工芸科に入学。現在は同学校の彫金専攻に所属しており、金属加工と七宝焼技法を作品制作技術として取り入れ、他者との関わりの中で得られる充足感を果実の形として表現する作品を制作している。令和四年度東京藝術大学卒業・終了制作作品展では原田賞と東京医科歯科大学教養部奨励賞を受賞。

●長屋　さくら（Sakura Nagaya）
1999年　愛知県生まれ
2023年　神戸芸術工科大学　卒業
現在　東京藝術大学 大学院美術研究科 工芸 彫金研究室　修士2年
記憶の価値をテーマにジュエリー作品を表現している。
古来より権威の象徴や呪術的な意味合いを持つジュエリーだが、人はそれらを身につけることで、装飾に込められた表面的な美しさだけでなく、着用から生まれる 充足感や安心感などの精神的な側面を補ってきた。その装飾的な行為を通して、記憶が心身を形成する重要な要素であると同時に、捉えきれない不明瞭な存在であることを示唆している。神戸芸術工科大学 学長賞、伊丹クラフト展 入選、東京藝術大学 安宅賞などを受賞。また、国内外多数の展示経験を通してアーティスト活動を続けている